■浦上満(浦上蒼穹堂)
美術品を選ぶポイントには、感性と知識、そして情報があります。でもまずは“見る”ことが大事。そこから始めていただければよいと思います。
古美術を購入する時は、偽物かどうかが問題ですが、本物であっても作品の出来映えによってその価値は「ピンきり」です。どこに価値を見出すか、そういうときこそ私たち専門家に聞いてください。
アートフェアは異種格闘技ともいえるでしょう。フェア会場はステージ、いろいろな作品が並びます。出展者側も自身のセンスと責任で、コンテンポラリーから古美術まで良いものを出展します。お客様も自分にとって魅力があって価値あるものを探します。それぞれの競い合いの場としてお互い楽しめたらいいと思います。そして気になる作品がありましたら、ぜひブース内のお店の方に声をかけてみてください。場合によっては、その後実際に古美術店や画廊にきていただき、ゆっくりご覧いただければと思います。
■今津浩太(瞬生画廊)
アートフェア東京には、多くのギャラリーが参加し、多くの作品を展示しています。興味のある作品があればぜひ、話をしてどんな作品かを知って、たくさん発見していただきたいと願っています。もし購入したいと思ってもフェアの期間中に、すぐに決めなくてもいいんです。フェアが終わって「あの作品が忘れられない」としばらくしてから連絡してきてくださったお客様もいます。まさに一目惚れ。フェアはギャラリーと知り合うきっかけをつくる場所だと思って、数日のフェア期間をフルにつかって気軽に話して、いろいろなギャラリーを知ってください。
オンラインや電話もいいですが、お店にきていただければ、そのたたづまいや、他の作家さんの作品をみることで、ギャラリーがどういう仕事をしているかわかると思います。私たちギャラリーは、作品を未来につなげていく仕事。ギャラリーと付き合っていくことで、自分に合う作品が巡っていく可能性もあります。アートフェアだけでなく、この循環のなかに入ってみることで世界を広げ、そのなかで楽しんでいただけると嬉しいです。
■牧正大 (MAKI Gallery)
今年はパール・ラム・ギャラリーをはじめ、海外のギャラリーも7軒参加していますし、コロナ禍で足止めされていた海外のお客様、またあらたに東京に興味をもっている海外のお客様が、今後徐々に増えていくと感じています。2022年のアートウィーク東京、2023年のArt Collaboration Kyoto(ACK)でも顕著に見られた傾向でした。そうなると国内のフェアではなく、否応なく海外のフェアと比べられていくでしょう。私たちもそれに備えないといけない。どのような展示をして、どのような接客をして、どのようなプロモーションをするか、ひとつひとつにクオリティを求められる時代がやってくると感じています。アートフェア東京は古美術から近代、現代まで日本に脈々と流れる美術の歴史をフェアで見られることを武器に、それぞれのジャンルでどんな作品をお客様に見ていただくのか、正念場を迎えるこの時期だからこそ、国際的に評価されるフェアになっていくチャンスなのです。
フェアコミッティを引き受けたのは、1ギャラリーとして参加する以上に、ギャラリーの皆さんとより質の高いフェアを目指したいと思ったからです。誰からみても、これはすごい展示だな、よい作品が揃っているなという感想をもっていただけるフェアになっていけば、そこに参加するギャラリー、アーティストのブランド価値も自然と上がっていきます。コミッティの皆さんと議論を重ね、ギャラリーさんと協力して、世界からみたフェアのポジションをあげていける方向を探っていきたいと思っています。